コレクター精神に反する業者よ、さようなら
さようなら、コンスタンチンチャイキン。私は今ここに、今後一切コンスタンチンチャイキンの腕時計は買わずに、愛好家として、引き続きそれ以外のブランドを楽しく買っていくことを宣言します。
私たちコレクターは、気付かぬうちに業界に弄ばれていることがあります。何も革新の起きない流通レイヤーによる大幅な国内外価格差や、理解を超えた人気便乗値上げもそうですが、何よりも国内輸入業者やブランドの都合に振り回されることが一番の損失です。
それらコレクターが弄ばれる様をそのまま見続けるのは、私や、プロデュースをお手伝いしたクロノセオリーの腕時計愛精神に反します。そして、結局はどの業界にでもいるような、一旦決めた話をひっくり返すような人たちや、媚びてきたと思いきや、嫌がらせをしてくるようなまったく筋の通らない人たちとは、付き合わないことが一番です。今回は残念ながら、私の愛するチャイキンブランドがそうなってしまいました。ですから、さようなら宣言です。
正当化が不可能な価格
話にならない人たちに関わるのもそうですが、正当化もできない価格とも、さようならすることにします。
2017年にチャイキン氏がジョーカーを発表した頃の販売価格は、日本円にして約90万円でした。
ジョーカーに使われているムーブメントはETA2824-2という汎用のものであり、基本的にはフォーメックスに使われているものと同じです。それをチャイキンさんが改造モジュールを付加することによって、ジョーカーから「リストモン」シリーズが始まりました。
ですから、90万円という価格は妥当と言えるでしょう。私が翌2018年にオリジナルジョーカーを購入した際も、確か110万円程度だったはずです。ここから、チャイキン氏の出すリストモンシリーズは、クラウン、クラウン2、ドラキュラ、とオリジナルシリーズは完売を続け、その間に受けるカスタムメイドのリストモンシリーズと共に人気が向上し、定価もぐんぐん上がっていったわけです。
私がクロノセオリーと、シンガポールの正規取次であるJeweluxe Worldをチャイキンブランドの国内販売の件でお繋ぎした2020年終わり頃には、その本国定価は約220万円にまで上がっていました。当然ブランドとして国内販売に同意していたから、繋いだんですけれども。
その時点で私が買った頃から価格が既に2倍、発売当初からは2.5倍に跳ね上がっていたということです。
ところが今年春、その本国定価が一気に約320万円に引き上げられました。しかも、それまでに制作依頼を出していたものも、その価格以下では売らないでくれというメーカー通知付きです。
そもそも国内では、その本国定価が200万円にも満たない頃からジョーカーが約2倍の388.8万円で売られていましたから、いかに国内外価格に乖離があったかがお分かりいただけると思います。
それがもう、今から(クロノセオリー以外で)買う方たちには、国内定価が軽く400万円台半ばを超えるという事態です。2017年の本国定価が90万円程度でしたから、4年遅れで国内で(クロノセオリー以外から)ジョーカーなどを欲しい人は、実に5倍の価格を払うことになります。
人によって価値観は違いますが、そのリストモンシリーズに450万円を払う価値はあると思いますか?
私はあると思いません。
さらに、本当に値打ちがあるのは「オリジナル」のリストモンです。それらは限定で発売されたジョーカー、クラウン、クラウン2、ドラキュラ、サンタなどで、それが以外は、いつでも誰でもチャイキンの本国サイトから定価で発注できる一般カスタムモデルです。オリジナルシリーズは、ちゃんと裏に限定数が刻まれてますから一目瞭然ですよ。
例えば、チャイキン氏が作ってくださったクラウン2くろのぴーすエディションにも、ちゃんと限定数と連番が刻まれています。あれはオリジナルシリーズではないですが、単なるワンオフ、ビースポークの「カスタム品」ではなく、ちゃんとひとつのエディションになっていることが分かります。
おそらくチャイキン欲しい!とおっしゃる99%の方はその事実さえ知らぬまま、450万円といった価格で、オリジナルシリーズやエディション品ではないカスタム品を買おうとされているのではないでしょうか?この話を見てから、これから某社が後追いでエディション品を作るかもしれませんが、これまではカスタム品を「限定1本」などとして煽っていたので、どうなることか楽しみに見ています笑。
そして国内価格が高い原因はずばり、旧来の流通ルートに頼って販売しているからです。メーカから輸入代理店に入り、小売店舗、そしてその小売店舗が店子として入っているデパートです。だから直接チャイキンのサイトから買える時計が、国内のデパートで買うだけで 一気に価格が跳ね上がってしまうということですね。
別にそれが悪だ、と言っているわけではないのです。ずっとそうですから。もしこれを、私が悪のような使いをしていると言うのであれば、よほど都合が悪くて自分指針が悪であると感じているのでしょう。要は、その価格で売るのも業者の自由ですし、買うのも皆様の自由です。私自身は絶対に買わないですけれど。
それだけの価格差がかかるなら、もし私が英語ができなかったとしても、通訳も雇って、直接本国のサイトから買うでしょうね。10年内のメンテ費用や輸送コストを考慮しても、余裕で元が取れるでしょう。
気持ち悪い業界人ともさようなら
もうご存知の通り、クロノセオリーを手伝っただけで、腕時計業界の古巣から私も含めて多大なる嫌がらせを受けました。それを全部笑いのネタにして愛好家の皆様と共有したら、皆様もそんな業者が卸す時計は買いたくないとおっしゃってくださって、それで激しい嫌がらせもピッタリと止まりましたが。もし真実を話していたのであれば、止めずにそのまま続ければ良いのにと思いますが。止めたことで嘘をついていたことが証明されましたね笑。
チャイキン界隈も然り。クロノセオリーが取り扱いを始めたらすぐに、私が個人で手に入れたサンタに対して、関係者から探るような気持ち悪いDMで「シリアル何番を手に入れましたか?私も入荷を待ってます。」のような媚びたメッセージが届いたのでスクリーンショットを保存してあります。既にその時にはもうサンタは売り切れてたのですけれど・・。
それを私が無視していたら、今度はクロノセオリーに何度もアポ依頼の電話がきたそうです。会う理由もなく断っていたそうですが、そうしたら態度を豹変して、「お前やら正規の修理受けてやっても良いんだぞ。」と電話の向こうで言ってきたそうです。これも全て面白いので全て保存してあります。機会があればその態度の変化を時系列で公開することにしましょう。
一言だけ言わせていただくとすれば、意味不明な圧力をかけようとするなら、最初から媚びて探らなければ良いのに、です。しかも、私は単に、そして純粋に1個人愛好家としてチャイキン時計を買ってるだけなのに、媚びてきても仕方がない笑。
私は業者でもないのに、もうあのような人たちには当然関わりたくもないですし、おそらく業者であるクロノセオリーの方も同様かと。筋の通らない行動をする気持ち悪い人たちとは、一切付き合わないのが一番。
私のチャイキン愛は変わらない
誤解を招いてはいけないのでお伝えしておきますと、私のチャイキン愛は変わりません。2021年5月にスイスで行われたオークションでは、これまでに私が買い逃していたオリジナルシリーズの以下の3本のリストモンを落札しました。
オリジナルクラウン2、約236万円
オリジナルドラキュラ、約298万円
オリジナルチタンジョーカー、約372万円
さらには、1品だけ出品されたチャイキン氏によるNFTデジタルアート「NFTジョーカー」を620万円で落札しました。
ちなみに、購入コストとして見るため、この金額には24%のオークション手数料も加味してあります。
すなわち、合計1,526万円をかけて、チャイキン氏の作品を落札しているわけで、これで私がいかに彼の腕時計に惚れ込んでいるかがお分かりいただけるかと思われます。なんせ、形のないデジタルアートの方が時計より高かったんですから笑。
ここでよく見てください。この3本は全て新品リュウズにタグまで付いた未使用品です。にも関わらず、最初の2本は市場価格(私の落札額+手数料)が最新の本国定価を下回っていることが分かります。上回ったのは唯一オリジナルのチタンジョーカーのみです。
ちなみに私が約298万円で落札した13本限定の未使用ドラキュラは、某社は800万円近くで販売していました。それをもし誰かが買われていたとして、この私の落札を見たらどう思われるのでしょうか笑。
日本よりもリストモンは欧米で先に評価されていますから、それでもこの価格で私が落札できたと言うことですから。
すなわち、今後国内で(クロノセオリー以外で)購入される方は、オリジナルでもないカスタムジョーカーを新品の市場価値を大幅に上回る価格で買わされることになるわけです。
いくら私にチャイキン氏の作品への愛があろうとも、価格の正当さに働きかけるのにも常識がありますし、何よりもそれを取り巻く異様な業界人の素行に影響を与えることなどできません。
すなわち、時計師や作品への愛情と、販売するメーカーへの愛情とは違う話だということです。ですから今回は、所有するチャイキン作品への愛情は変わりませんが、メーカー、ブランドとしてのチャイキンにはさようなら、ということです。
ぜひ、某社がクロノセオリーや私に嫌がらせするために出している複数の公式かのようなドキュメントにある、チャイキン社のコーポレイトスタンプを並べて見比べてください。面白いことが分かりますから。
例えそれが本物であろうが、クロノセオリーが誰かを騙してチャイキン時計を裏ルートで仕入れて売ったり、海外からかき集めて売ったり、大ブランドならまだしもこんな独立系ブランドではそんなことは無理ですよ。何より、嘘で自分のエディションなんて作って売れませんから。もしアフターマーケットから仕入れてきたりしたら、コストが見合いませんし、販売価格が高くなってしまいますからね。これまでクロノセオリーが販売してきたチャイキン時計の価格を、それ以外と比較してみてください。
結果このような小ブランドの販売で嫌がらせをしあっても、何の得にもなりません。それよりも、彼らにとっても我々愛好家がチャイキンブランドを盛り上げた恩恵の方が大きいと思うのですが。そうやって続けていけば、お互いに業界としても、ブランドとしても盛り上げて、高めあって、より売れる商品になっていたことでしょう。しかしもう、それも終わり。日本で一番チャイキン時計を愛していただろう私でも、もう限界で無理。
しかし、こういったブランドの悲しい流れは実に頻繁に起こります。売れてくるとメーカーもしくは輸入業者が調子に乗って、せっかく築き上げられてきたブランドが、時計師自身のビジョンと乖離してくる。こうやってダメになるブランドを、いったいどれだけの数を見てきたことでしょうか。当然、チャイキン氏の時計は今後も売れ続けるでしょうし、人気もあるのでビジネスがダメになることはおそらく無いでしょうが。私もどうにか状況を改善できないかと、チャイキン氏にも軽く事情を聞いてみましたが、彼は一切販売に関わらないので、そう言ったことに関しては全て社長に聞いてください、とのことでした。
ちなみに彼自身は、かつて自分の腕時計が不当に高く売られることは望んでいない、とおっしゃっておりました。
ブランドを育てるというのは非常に難しいことでしょうが、いずれにせよ、あとで決まった話を変えるような人たちとはビジネスをすべきではないでしょう。それ以前にビジネスとして携わっていない自分でも、そのような人たちは気持ち悪いのでお断りですが。
世界の流れを見よう
国内の流通だけを見ていると、こう言った渦に巻き込まれたことさえ気づかないことがあります。我々腕時計の買い手は、本来はそのような不当な流れに呑み込まれないことが一番です。
新参者に嫌がらせをするような人たちや、別方向から同時に媚びたり圧力をかけようとしたりするような人たちとは、一切関わらずに純粋に腕時計を楽しみたいものです。
それでも我々が大好きな工芸品としての腕時計と、それを売るメーカー、ブランドとが大きく乖離してくると、その腕時計を愛しているのと、ブランドーを愛しているのとは話が別ですから、必然的にブランドからは距離を置くことになりますよね。皆様も腕時計に限らずそういった経験がありませんか?
ですから、一旦は腕時計と同時に、それを売るメーカーも併せて愛せるブランドを、もっとたくさん見つけて一緒に愛好家として楽しんでいきましょう。
ちなみに、チャイキンはどの国の小売店、ディストリビューターにも紙面による契約書を提供していないそうです。今回もそういったマイクロブランド製品の人気が出てしまった時の、典型的な暴走パターンになってしまいそうで、自分的には萎えてしまいました。
私自身実は、もう1本チャイキン氏の複雑時計が近く届く予定があり、さらにもう1本複雑な時計をカスタムしてオーダーする予定がありましたが、これを機にそれを取りやめて、違うブランドにその分の予算を回すことにしました。最初に宣言した通り、この取り巻く状況に変化がない限りは、今後チャイキン氏の時計を買うことはもう無いでしょう。次に届くものを含めて、合計8本でコレクションは終了です。
そして、クロノセオリーの経営陣やスタッフにも正直に知っていることをお伝えして、信念に反するブランドとしてチャイキンの取り扱いに関する取りやめを依頼して、受理されました。当然、販売分の腕時計に関するアフターケアへの思いと、チャイキン作品への愛情は、携わる皆の間では変わらぬままに、です。
我々愛好家は、こうやって時計師とブランドとが乖離して、裏切られる可能性もあらかじめ知っておいて、その前提でも欲しいなら心して購入に備えねばなりません。知っているのといないのとでは、いくら欲しい腕時計でも、買った後に何かが起こった時に気分が大きく変わりますからね。
最後に携わるジョーカー
ということで、私がプロデュースを手伝ったコンスタンチンチャイキン、リストモンシリーズの最後を飾るのは、クロノセオリーで販売される最後のチャイキン時計となる「スペースジョーカー」です。

まるで宇宙服を着ているかのように、文字盤もストラップも全てブルーを纏ったジョーカー。おそらく、国内では300万円台で買える最後のリストモンとなるでしょう。
そしてケース裏をよく見てください。

裏蓋にはChrono Theory1/3とあります。そうです、本エディションは、クロノセオリーオープン記念にチャイキンに3本限定モデルとして発注したものです。昨今の事情で入荷がかなり遅れたようですが。しかし、この時点でもうクロノセオリーが同ブランドの取扱をやめるため、2/3と3/3は制作されることなく、1本しか作られなかった特殊な「エディション」として最後を飾ることになります。
チャイキンというブランドは変わってますよね?クロノセオリー限定エディションを制作しておきながらにして、事後に話をかえるのですから。こんな裏蓋の彫りをクロノセオリーが勝手には入れられませんからね。では、なぜそんなこと受け入れたの?と聞かれたら、気が変わったとでも言うのでしょうか?それとも、脅されて彫りを入れましたとか?笑
しかし、いかにズレたブランドや業界人に萎えようとも、この腕時計に注がれた私とクロノセオリーの皆様の愛情は変わりませんので、何卒、スペースジョーカーがチャイキン時計を愛する方の手に渡りますように。
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