クリスタルガード・クロノアーマーで腕時計に傷がついたという悲劇

クリスタルガード・クロノアーマーと私の関係は、私がメーカーに掛け合って作って頂いたいきさつについて、「最強施工法」と共に先日ブログに書かせていただいた通りです。

2020年3月1日に発売されたクリスタルガード・クロノアーマーは、コロナ禍にもかかわらず同年4月中にはメーカー出荷が1万本を超え、継続してAmazonや楽天でもランキング入りする大人気商品となりました。

私と喜びを共有してくださった数多くの腕時計ファンの方たちの声を見ていると、まるで自分のことのように嬉しいのですが、一方では、最近になってチラホラと「クリスタルガード・クロノアーマーのせいで腕時計傷がついた」という人を見かけるようになったのです。

それこそ、多数存在する周りのコレクター仲間達は、平気で金無垢の鏡面にもクリスタルガード・クロノアーマーを施工していて、満足な結果を得られていらっしゃいますし、傷がつくなんてことなど原理的にもあり得ないのに、と疑問に思っていたところ、被害を訴える方々の行動や言動をつぶさに精査しましたところ、とある共通点に気付きました。

それは、結局「自分の意思で腕時計に傷がつくようなことをしている」というものでした。

大事な腕時計に傷がつく苦しみは、大の傷嫌いである私にも辛酸を嘗める思いですが、クリスタルガード製品全般はもともと原理的にも傷の原因となることが物理的にあり得ない製品ですから、もし原因がご本人であれば、その責任を商品に転嫁してはメーカーの皆様の名誉に関わることでしょう。

しかし、そう言っていても事情は解決しませんから、今後クリスタルガード・クロノアーマーの施工をされる方のためにも、どうして傷がつくことがありえるのか、ではなぜほとんどの人は傷もつかずに美しい結果を得ているのか、の2点について書いておこうと決めました。

原理的に傷がつかないクリスタルガード製品

私が自動車にクリスタルガード・プロなどを長年使っていたのも、傷をつける要素と必要が全くないからです。

そもそも、クリスタルガードのコーティング成分は、絵具のように表面で固まるような揮発硬化系の液剤ではなく、砂絵のように表面に反応して皮膜が形成される反応硬化系の液剤です。

ようするに、中のものがカチコチに固まるわけでもなく、ガラスの粉が入っているわけでもなく、皮膜が形成されるまでは「ただの水」と変わらないということです。

中には、「ボトルの中で石状に液剤が固まってるだろ!」とおもしろい方もいらっしゃいますが、あれは液剤を攪拌するための小石です笑。

すなわち、ワックスとはちがい、塗り付ける必要もなく、力をいれて擦り取る必要もありませんので、クリスタルガードはちゃんと施工すれば施工面を一切痛めずに施工ができる数少ないコーティング製品なのです。

実は、これは自動車にも同じことが言えます。塗りながらずっと誤魔化しているので気が付きませんが、クリアコートの塗装面に傷をつけているのは、なんと力を入れてワックスを塗りつけている自分自身なのです。

液剤が水同様で傷をつける要因となることが不可能であるのに、それでも腕時計に傷がつくということは、傷の原因はクリスタルガードの液剤ではないということです。

研磨剤も艶出し剤も樹脂も入っていない

クリスタルガード・クロノアーマーには研磨剤も艶出し剤も樹脂も一切入っておりません。

すなわち、表面を削るものも、あとで傷つきやすい柔らかい施工面を形成するものも、成分として一切含まれていないということです。

よって、液剤そのものが腕時計表面に触れても、直接そこに傷をつけたり、傷がつきやすいようにしたりということは全くあり得ないということです。

傷がついた原因はクリスタルガードではない

まず、この2点から、腕時計についた傷の原因がクリスタルガード・クロノアーマーであることは原理的にあり得ないということがわかりました。

考えても見てください。これだけの人たちが腕時計に使ってきて何の問題もなく、それどころか過去20年に渡って、もっと施工表面の柔らかい自動車が傷だらけになっていない理由を。

そうです、製品ではなく、傷がついたと主張する人の方に、何かの原因があるとしか考えられません。

では次に、それでもそれらの人々が、クリスタルガード・クロノアーマーを使って腕時計に傷がついてしまったと考えてしまうのか、その原因を考えてみましょう。

原因①:「磨くもの」と勘違いしている

SNSでも、「クリスタルガードで磨く」という表現をよく見かけますが、見るたびに冷や冷やします。

私もあえて「ピカピカに磨く」という表現を使うこともありますが、それは非常に危険です。

なぜなら、「磨く」という目的を念頭にクリスタルガード・クロノアーマーを使うと、腕時計に力を入れてクロスを擦るようになってしまいがちだからです。

また、「磨く」すなわち「研磨」は表面を削り取る行為であり、それをイメージすると、汚れを拭き取るのにも力を入れがちになります。

すなわち、「磨こう」という目的を抱いて腕時計に傷がついた人は、そもそもその目的自体が間違っているということです。

クリスタルガード・クロノアーマーですべきことは、それとは全く違う「塗って汚れと共に拭き取る」ことです。

原因②:使う道具を間違っている

道具を間違うと、腕時計の表面を強く擦りがちになります。

特に危ないのが、眼鏡や腕時計を購入するとついてくる、古典的な薄くて硬いツルツルしたような、もしくはほんの少ししか毛足がないようなクロスです。

あれは、表面に乗った油脂を拭き取るには性能を発揮しますが、皮脂や汚れを拭き取るのにはある程度の圧力が必要となるため、腕時計に傷をつけてしまいます。

次に、シリコンやオイルが塗布されたセームやクロスです。それら製品は一次的にはきれいになったように見えますが、傷を覆って照りを出す成分が表面に残っているだけで、その後すぐに酸化したり、染みのように見えたりして、結局は汚れの原因にしかなりません。

それどころか、その成分がさらに汚れや皮脂を引きつけます。

原因③:普段のお手入れが間違っている

60年代や70年代から更新されていないような古い腕時計のマニュアルには、「石鹸で洗う」などと書かれていることがありますが、あれはご法度です。まぁその時代には「石鹸」しか候補がありませんでしたからね。

石鹸にも油分が含まれていますし、手洗い石鹸などにはさらにモイスチャー成分が含まれていますから、結果として余計に表面に皮脂が付着し、目に見えない形で固化し、果てには酸化して樹脂化し表面を劣化させます。これは、先ほどの加工済みクロスとも共通する話ですね。

アルコールで拭いているつもりで、腕時計もきれいになるだろうと勘違いして、手を拭くためのウェットティッシュをつかうのも同様です。

また、オイルやワックス自体も然り。

要するに、腕時計の表面に余分なものが少しでも付着、固着するお手入れグッズは、その後の更なる汚れの原因となってしまうだけです。

原因④:普段の扱い自体が間違っている

クリスタルガード・クロノアーマーで黒のPVDコーティングが腐食したかもしれない。最近ではSNSでそういう方もいらっしゃいましたが、突き詰めてコメントを見てみれば、普段からそのまま腕時計をしたまま温泉に浸かっていたりしたとのこと。

たとえば、温泉の成分によっては、金無垢が瞬間的に鼠色に変色するところもあるぐらいです。PVDといえどもその被膜圧からすれば、温泉の成分によっては簡単にその下の金属まで腐食することでしょう。それはクリスタルガード被膜であっても同様です。

そもそも、この場合はケースの腐食にクリスタルガードなんて全く関係なかったということです。

先述の通りクリスタルガード製品には溶剤も研磨剤も入っておりませんから、腐食するという概念がありません。もしそうなるはずであれば、自動車の塗装もドロドロに溶けるどころか、あなたの時計は水道水でも溶けていることでしょう。

原因⑤:艶が出るから傷が目立つ

これは、私も経験済みの問題です。腕時計がきれいになるので、元あった傷を改めて認識してショックを受けるというものです。

私の場合、クリスタルガードを施工した時計を見るため、写真を写すためだけにダイソンのLED照明を導入しましたが、そのおかげで今まで以上に新たな傷を発見して凹んでいます。

要は、この場合傷を見つけるには2パターンあって、一つ目は普段より細部に注目してしまうからというものと、二つ目は表面の微細な傷が埋まって艶も出るので、一定サイズ以上の傷に余計に注意が向いてしまうというものです。

これは改めて、私も日々感じる、美しくなることの弊害ですね。いずれにせよ、腕時計の仕上げに、以前よりも関心を抱いてしまっているということです。

原因のまとめ

以上5点の「クリスタルガードが傷をつけた」と勘違いする原因をまとめますと、こうなります。

  1. 自分の意思で腕時計を「磨いて」しまっている。
  2. 施工やおていれに傷のリスクが高い道具を使っている。
  3. 余計に汚れて傷がつく、本末転倒な方法でお手入れをしている。
  4. そもそも、普段から腕時計の扱いが荒い。
  5. 腕時計の仕上げや傷への注目や関心が高まった。

ということは、あとは傷をつけないでおく方法は簡単です。

腕時計に傷をつけないためには

  1. 常に「磨く」のではなく「赤子の肌のように超優しく拭く」ことを心がける。
  2. 汚れであろうが何であろうが、できるだけ毛足の長いマイクロファイバークロスで「撫でる」ように拭く。
  3. 腕時計に触れるときは、一切圧力をかけない。
  4. 表面に余計な成分が残るお手入れをしない。
  5. 自分にとって、後の祭にならないレベルの扱い方をする。
  6. 1から5を念頭に、クリスタルガード・クロノアーマーで傷のリスクを下げながら、輝きと美しさをプラスする。

傷のリスクを避けるための、せっかくのクリスタルガード・クロノアーマーの施工時に、自ら進んで腕時計に傷をつけていたら全くも本末転倒な話なのです。まさに「悲劇」であるとしか言いようがありません。そして、嘆かわしい悲劇のヒロインの原因は、大抵そのヒロインご本人であるというのと同じですね。

そのような人たちは、考えと行動を改めない限り、水とメガネ拭きで腕時計を拭いていても表面が傷だらけになっている人でしょう。

どのような道具も使いようですが、道具に責任転嫁はよくない話です。何事も、腕力ではなく頭で問題に対処せねば、その先も腕時計と心の傷は深まるばかりでしょう。

ということで、皆さんも愛する腕時計の傷が嫌な場合は、天使のような「フェザータッチ」でケアしてあげてくださいね。

あ、あと、「時計の傷は俺の歴史」系の方。今回は関心のないお話であったかもしれませんが、ここまでご熟読ありがとうございました。ちなみに、自分は歴史として傷を残す腕時計と、傷を一切つけたくない腕時計を分けているタイプですので、どちらの気持ちもよくわかります。

最後に、過去に何件かご要望を頂いていましたので、私が腕時計に優しくクリスタルガード・クロノアーマーを施工している姿の動画をご紹介します。

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